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蜂須賀ちなみの日記帳

【もう先月の話ですが…】2014.7.6 BIGMAMA @ Zepp Divercity について

UKFCよかったなあ…なんて思いがまだ色濃く残っていますが、先月BIGMAMAの『Roclassick Tour 2014』に行ってきました◎

これがすごくいいライブだったからとても感動して個人的にレポを書いたのですが、まあ、載せる場所もなくて私のUSBカードの中で亡霊化していたので(笑)、せっかくだからここに掲載してみようかなと。

あの場にいた方は思い出のお供に、いなかった方はおすそ分けに、ぜひ。



以下、追記にて!

何でそんなに力いっぱい演奏するの? 彼らのライヴを観ていると毎回のようにそんな疑問がわいてくる。もっと力を抜いたほうが良い音が出るかもしれないのに、もっとリラックスした方が弾きやすい/唄いやすいだろうに、とすら思うこともあるくらいだ。
 
〈ロック×クラシック〉のコンセプトアルバム『Roclassick2』をリリースしたBIGMAMAのツアー『Roclassick Tour 2014』。ツアーファイナルのZepp DiverCity公演でもそんなことを考えていた。開場BGMとして流されていた往年のクラシックの名曲が鳴り止むと歓声が湧き上がる。ステージ上にメンバーが姿を現し、1曲目に演奏したのは『Roclassick2』の1曲目でもある「Animanimus」。この曲は金井政人(Vo,Gt)がギターを持たずにハンドマイクで唄い上げるスタイルだ。力強く鳴らされるベートーヴェン「運命」の「ジャジャジャジャーン」のフレーズに合わせて「Welcome to the Roclassick Tour Final!初めから全力で行こうぜ! 」と金井が叫び、「虹を食べたアイリス」へ。金井は胸を何度も叩きながら唄い、柿沼広也(Gt,Vo)と東出真緒(Vn)が雄大にフレーズを響かせる。演奏をしながら全身を使ってフロアを煽るフロント3人の音を乗せて、安井英人(Ba)とリアド偉武(Dr)のリズムはバンドのサウンドを前のめり気味にドライブさせていく。まだ2曲目にもかかわらず、サウンド面でもアクション面でも熱量全開だ。冒頭に書いたような疑問はどのライヴを観たときも感じていたのだが、そのアツさ(簡単に言うと音量の大きさや音の鋭さ、オーディエンスをあおるアクションの多さなど)が今までと桁違い。そのまま「#DIV/0!」「Theater of Mind」などアッパーチューンが凄まじい熱量で以て次々と繰り出されていく。
 
セットリストが進むにつれてその理由が分かってきた。簡単に言うと〈ツアーで得た確信〉だ。〈ロック×クラシックでライヴハウスを熱狂させる〉というテーマで行われたツアーの成果が垣間見える場面がこの日多々あった。たとえば、リアドの力強いドラムロールからスタートする「走れエロス」では、ヴィヴァルディの「春」の名フレーズを超絶技巧で演奏する東出・柿沼・安井に歓声が集まる。ハチャトゥリアン「剣の舞」のフレーズを借りている「ツルギが無い」と「天国と地獄」(オッフェンバック)の連投ではあちこちでモッシュが発生し、フロアは狂騒の渦と化す。特に、柿沼・安井・リアドのセッションによる「Plug In Baby」(MUSE)→東出のキーボードソロによる「月の光」(ドビュッシー)→5人体制に戻っての「Moonlight」という流れは素晴らしかった。そもそも感情を剥き出しにすることは心を丸裸にすることだから、それなりの勇気を要する行為であり、一種の開き直りが必要になってくる。だから全国のライヴハウスを〈ロック×クラシック〉で熱狂させ、その景色を自らの目に焼きつけ、その空気を自らの肌で感じたこと、つまり〈自分たちにしかできないことをやった〉という確かな経験は大きな意味を持つ。そしてバンドの表現力は一皮も二皮も剥けたのだろう。そういう意味で「Perfect Gray」は圧巻だった。曲の終盤、真っ赤な照明がギラつくなかで金井は叫ぶように絶唱し、柿沼・東出・安井・リアドも自分の楽器をガンガン掻き鳴らしまくり叩きまくる。「なんでもいいから叫べ!」という金井のアジテーションもあり、ラストにはオーディエンスも加わっての絶叫。白にも黒にもなれない人間について唄った曲だが、1人の人間の内側に閉じ込められた感情の渦は、Zepp DiverCityの中で渦巻くたくさんの人間のエネルギーとして表現されたのだった。
 
大音量のシンガロングが巻き起こった「No.9」や「bambino bambina」、「荒狂曲“シンセカイ”」にも負けない盛り上がりを見せた「Swan Song」など、リリースから3ヶ月に満たない『Roclassick2』の曲が、何度も演奏され親しまれてきた旧譜曲と同じように既にアンセム化していることに驚く。アンコールの冒頭で金井は「大人になると嘘をつくのがカッコ悪くなるから、みんなの前では嘘をつけないんだよね」と笑っていたが、おそらくこのバンドにとっては〈嘘をつかないこと〉と〈感情を剥き出しにすること〉とがイコールなのだろう。だからヴォーカルは切実な願いを込めるかのように唄い、ギターとバイオリンは高音を効かせて鳴きまくり、ベースの音はやたら太く、ドラムはやたら力強く叩く。バンド側がそうやって感情を溢れんばかりに表現するから、オーディエンスも目いっぱいのリアクションで応える。それを受けてバンド側もまた刺激される。そんな循環を経て、お互いがお互いへ感情全部をぶつけ合うような、濃密かつ積極的なコミュニケーションが生まれるのだ。〈悲しみが悲しみで悲しめるように/喜びが喜びで喜べるように〉。本編ラストに演奏された「Sweet Dreams」にこんな一節があるが、BIGMAMAが自分たちの音楽を鳴らす理由はきっとこれだろう。「ここでなら体いっぱい、心いっぱい楽しんでもいいよ」という場所を提供してくれるような、誰も置いてけぼりにしないような音楽。だから彼らの音楽を目の前にすれば、喜怒哀楽で顔をくしゃくしゃに歪めてしまったりする。せめてライヴハウスぐらいは、そんな場所であってもいいのかなと思えてしまったりする。きっとそう感じているのは私だけではないということを、2500人のジャンピングで大きく揺れる地面や凄まじい音量のシンガロングが物語っていた。
 
「大切なものは目に見えないってよく言うじゃないですか。愛とか希望とか夢とか。でも俺は今バッチリ見えちゃってるなーって思って」
 
ダブルアンコールまで含めると全部で26曲。それらを矢継ぎ早に演奏する中、本編で唯一のMCでそう言った金井をはじめ、満員のフロアを見渡す5人の表情は充足感で満ちていた。コミュニケーションの積み重ねは信頼関係を生み、相手を信頼することから愛は始まる。それをまっすぐに行うことができるBIGMAMAは、〈バンド対オーディエンスの音を介したコミュニケーション〉に誠実なバンドといえよう。これからもっともっとたくさんの人と相思相愛の関係を結ぶバンドになってほしいと、心の底から思った。
 


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▼「Moonlight」も「Perfect Gray」もMVないので……
 『Roclassick2』より「Swan Song