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蜂須賀ちなみの日記帳

ライヴレポート|2015.04.25 THE ORAL CIGARETTES@なんばHatch

:ライヴを観て自分が考えたこと・感じたことをメインに書いています。

詳細な演奏・演出・MC等の内容を知りたい方は、ナ○リーなどを見ていただけたら、と思います。

 

東京でワンマンライヴがある度に、ライヴレポートを書かせていただいていたTHE ORAL CIGARETTES。

 

▼2014.07.18 @渋谷CLUB QUATTRO

ro69.jp

▼2014.11.29 @TSUTAYA O-EAST

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いろいろなインタビューやらでメンバーの動向を見ていたときに今年はできるだけワンマンを観に行った方がいいんじゃないかと感じていたのと、彼らの地元・関西でのライヴを1回観てみたかったという2つの理由で、大阪まで行ってきました。

 

ライヴからだいぶ日が経ってしまったけど、残したいから残しておこう。 

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 手に入れたい未来へ繋がる道筋をしっかり考える賢さがある。それを行動に起こす実行力もある。その上、メンバーそれぞれがめちゃくちゃステージ映えする――バンドの名はTHE ORAL CIGARETTES(以下、オーラル)。インディーズ時代からライヴを観させてもらう・音源を聴かせてもらう機会が何度かあったが、そのときから「このバンドもいつの日かデッカいステージに立つようになる」という漠然とした予感があった。しかし私が面白さを感じたのはそこではない。華やかさと闘志の裏にある焦りとか、悔しさとか、苛立ちとか、葛藤。こんがらがったままの感情が、的確な戦略からはみ出しまくっているサマだ。歌詞は内省的で負の感情が基になっているものが多いし、楽器隊のメロディラインも耳には残るがどこか一筋縄ではいかない。

 

楽器を持っていないときは、賑やかな関西のお兄ちゃんたち。そんな彼らも、スポットライトを浴びる者の光と影どちらも背負いながら音楽に向かう。特に昨年秋以降、自分たちの全部――それこそ自分ですら上手く飼いならせない面倒臭い感情も含めて――を伝えたうえで、オーディエンスとコミュニケーションを取ろうとするバンド側の意志が濃く表れ始めた。聡明でありながらも愚直なこのバンド。変な話、これから先、人一倍壁にぶつかることが多くなると思う。だからこそどうやって勝利を掴んでいくのか、という過程をリアルタイムで追いかけていきたいと思った。きっとそのときの勝利は「番狂わせ」ではなく、オーラルにとっての確かな確信になるはずだから。

 

それでまあ、彼らの地元・関西でのライヴを観てみたくて、大阪まで行っちゃったわけだ。

開演予定時刻から少し過ぎて、ステージを覆う紗幕に心電図が映し出される。英語の音声、日本語の字幕で「ねぇエイミー」と語りかけながら、「僕はここで最高のライヴをするよ」「君もそうだろう?」「世界中の人々が笑えるように」などと最新シングルの表題曲“エイミー”。空気を引き継いだ言葉が並ぶ。そのあと、交互に表れる4人のシルエット。続けてバンドのロゴが目一杯に表示されたあと、“STARGET”のイントロとともに真っ白な幕が落ちた。

 

随所に鈴木重伸(G)/あきらかにあきら(Ba/Cho)/中西雅哉(Dr)によるソロを挟んだり、“リメイクセンス”では山中がシンセサイザーを演奏したりとワンマンならではの趣向もありつつ、全体的なトーンとしてはファンへ感謝を伝えるようなライヴだった。普段のライヴの終盤、曲の余韻を気にも留めず無邪気に「ありがとう!」と何度も叫ぶあの感じが、そのまんま2時間続いたかのような。ビビットカラーの照明の下、最初の3曲。鋭いアッパーチューンが続くなかでも、4人の表情は晴れやかだ。その理由は後の山中拓也(Vo/Gt)のMCに表れる。「理解できない部分はあったとしても、ここにいるみんなはオーラルを知ろうとしてくれているから来てくれている」「オーラルにはいろんなファンがいてさ、昔から応援してくれている人も最近してくれた人も、騒ぎたい人もしっかり聴きたい人もいる。だけど今のお客さんも昔のお客さんも繋がってほしいし、みんな仲良くしてほしい」。バンド-オーディエンス間の、信頼にも似た感情。たとえ初めてライヴを観に来た人だとしても、ワンマンに足を運んだみんなのことは信じていたいという気持ち。どうしても理解されない部分や、誤解される部分があったとしても、自分の内側にある想いはできるだけ出していきたいという意思。本ライヴの3日前(4/22)、SiMのツアーファイナル公演にて声が出なくなったという山中は、途中のMCで「(ライヴ始まりの)幕が終わる瞬間まで正直めっちゃ怖かった」と話していた通り、確かに彼の声はときどき裏返っていたし、普段よりも高音域が出しづらそうだった。しかしそこであきらがコーラスを一際強く入れていたり、バンドの音が山中に合わせて弱まることなくいつも通り(もしくはそれ以上)の熱量で演奏をしていたり。また山中自身も怯むことは一切なく、自分の歌でバンドを引っ張っていくんだという姿勢を徹頭徹尾貫いた。「デッカい音を鳴らしたら両手上げるやつ、やってみたいんですけど!2000人が手を上げたら4000本になるやろ?」「スッゲぇええええ!!」と笑いが収まらない様子でフロアを見渡す山中。「2011年、オーラルが結成したときのキラーチューン」=“mist...”、「2012年、オーラルがとんでもない化け物を生み出しました」=“大魔王参上”、「2013年、初めて全国流通盤を出しました」=“Mr.ファントム”、「そして俺たちを(自分の立つステージを指しながら)ここに連れてきてくれた曲です」=“起死回生STORY”――とバイオグラフィを振り返りながらも、クライマックスに向けて熱く盛り上がった4曲で本編終了。

 

アンコールで演奏されたのは“エイミー”だった。つまりこの日のライヴは“エイミー”に始まり“エイミー”に終わった。インディーズ期からファンとともに育んできたというシンプルなラブソングが軸にあったからこそ、バンドの過去・現在・未来を、そして人と人とを滑らかな曲線で繋いでいくかのようなライヴとなったのだろう。私はこれまで東京でしかライヴを観られていなかったのだが、その度に感じていたギラッとした野心よりも、4人の柔らかい表情が印象的だった。「今までは人間の汚い部分を見て喜んでいるような人間だったけど、今は支えてくれた人への感謝も見えてきています」「ここにいる2000人、誰一人おいていかへんからな!」(山中)という言葉からも、バンドが少しずつ変わっていっていることが分かる(註:昨年7/18のワンマン@渋谷CLUB QUATTROでは集まったファンに対して「振り落とされずについてきてください」なんて言っていた。参照:

THE ORAL CIGARETTES@渋谷CLUB QUATTRO | 邦楽ライヴレポート | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト )。

冒頭に書いた「スポットライトを浴びる者の光と影」のうち、光の面が強く浮き上がった、懐の大きなライヴ。今、バンドが向かう未来とそこへ連れて行きたい人々が明確になったならば、次のステップに進むため彼らはまた何か、言うなれば闇に対峙していくことになるのだろうか。ここから先も変わりながら、同時に変わらないまま進んでいくであろうオーラルが、どんな表情をしながら勝利を掴んでいくのか。その過程を追いかけていきたいと思う。

 

 

 

[SET LIST]

01.STARGET

02.出会い街

03.モンスターエフェクト

04.ハロウィンの余韻

05.リメイクセンス

06.N.I.R.A

07.GET BACK

08.嫌い

09.キエタミタイ

10.僕は夢を見る

11.踊り狂う人形

12.机上の空論に意味を為す

13.See the lights

14.透明な雨宿り

15.mist...

16.大魔王参上

17.Mr.ファントム

18.起死回生STORY

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