メジャーデビュー前夜にして、ヴォーカル・牧野さんの誕生日というスペシャルな日に開催されたLILI LIMITの自主企画イベント「-LIVING ROOM EP Release Tour- LILI LIMIT presents PUNCTUM」@青山CAY に行ってきました。
この青山CAYっていう場所、聞いたことないハコだなと思っていたら、ライヴだけではなくウエディングパーティーなんかもできるスペースみたいで、フロアの中にはオシャレなバーカウンターも。そんなところも含めて何だかリリらしいなと思った。
この日のゲストは事務所の先輩・Charisma.com。私自身ライヴは初見だったし会場にもたぶんそういう人が多かったと思うけど、あっという間に引き込んでいくサマはさすが。先輩、頼もしいっす。
単純に自分が歳をとったということもあって、毒を毒としてそのまま吐くコンテンツには飽き飽きしていたし、「で、それが結局何を生むの?」ぐらいに思っていたところだったんだけど、カリスマドットコムの場合は他虐が自虐に繋がることをちゃんと自覚した上での毒舌だから全然嫌味じゃない。そういうところも含めてエンターテインメントとして成り立たせているように思えた。だから、めちゃくちゃ賢くて鋭い人たちだなあ、と。ライヴが終わったあとには何とも言えないデトックス感。新しい。
そしてこの日のホストであるリリの登場。そもそもライヴ観るの久しぶりだなあ、と思ってスケジュール帳遡ってみたら約1年ぶりでした(参考:2015.7.11 JAPAN’S NEXT vol.10 ライヴレポート)。何かもっと空いたような感覚があったんだけど、それはこの1年間、バンドの知名度が急上昇していく様子を「うわースゲー」って言いながら眺めていたからだと思う。
で、久しぶりに観た印象は一言でいうと〈変わった。けど、大事なところは変わっていない〉。矛盾しているじゃないか、とか誰かにツッコまれそうだけど、私が好きなミュージシャン/アーティストは節目のタイミングに〈変わらないために変わっていく姿を見せてくれる〉という共通点があるんです。
じゃあ何が変わったのか、というと、いちばん分かりやすかったのがやっぱりサウンドで。1年前はシンセやギターなどの上モノがあそこまでガンガンなっていなかったと思う。で、1曲目の1音目から「うお、結構ガンガン来るなあ」と驚いていたら、最初のMCで牧野さんがPAさんに「僕への誕生日プレゼントに……もっとキーボード(の音量)をください」とリクエストしていたので、まだ上げるのか、と単純に驚いた。そういうふうに音像が変わったのは、この5人が見据える先の景色が今までよりももっともっと大きなものになったからなんじゃないか、と思う。実際この日のステージングを観ていて〈もっと遠くへ〉という野心の強さを感じる場面が何度もあった。で、正直言うと、彼らの頭のなかにあるイメージはまだバンド自身の身の丈よりも大きなものなんだと思う。だからチグハグしているというか、歪に感じた部分もあった。すべてにおいてフルパワーすぎるというか、もっと肩の力を抜いてボールを投げた方がもっと遠くまで伸びていくんじゃないかな、と。でもそうやって背伸びしたときのジタバタ感がかえって人間くさくて、憎めなかったりする。余白や伸びしろがあるからその先が知りたくなる。
変わらなかった部分は〈伝えたい〉という想い。白で統一された衣装とか、オシャレなアートワークとか、そもそもの曲自体とか、このバンドに対して〈洗練されている〉というイメージを抱いている人はかなり多いと思うしそれはその通りだと思うんだけど。LILI LIMITのいちばん面白いところは、歌詞はかなり内省的な内容なのにこれだけ音がポップだということで、その理由って結局は〈伝えたいから〉なんじゃないかなと思う。以前、「RIP」という曲(タワーレコード限定シングル『Girls like Chagall/RIP』収録)を披露したライヴのMCで牧野さんが「祖父が亡くなって一生分の涙を流したけど、バンドをやることによって感情を取り戻している」という話をしていたんだけど、そうやって自分が音楽で気持ちを取り戻した経験があるからこそ、音楽を含むアートが人の心に及ぼす魔法のダイレクトな力を信じているんじゃないか、とか。それこそ今回のメジャーデビュー作は『LIVING ROOM EP』というタイトルで、〈日常〉に焦点を当てた作品なんだけど、それも自分が伝えるべき相手=〈人〉のことを強く意識しているからなのかな?とも思うし。
まとめると、LILI LIMITというバンドの核には〈伝えたい〉という想いがあって(≒変わらない部分)、それがどんどん強くなっていったからこそ、バンドの視野が広がり、サウンドやステージングも変わってきたんじゃないか、という感じです。この日のライヴ、序盤は演奏がちょっと堅いかなと感じたけど、本編ラストの「at good mountain」やアンコールの「Girls like Chagall」の頃には、そういう今のバンドの状態が良い温度感で伝わってきました。この2曲をバンドが大切にしていることも、個人的には嬉しかったです。
以下、余談。
→ で、レーベルの人からライブのお誘いを受けたんだけど、面白いというか不思議というか、ちょっと変な気分です。私結構シャイなので気になるバンドを見つけたとしてもめったに自分から声をかけないんだけど、今回もそうだったんだけど、結局こうやって繋がったんだなと。久々に観るライブ、楽しみ。
— 蜂須賀ちなみ (@_8suka) 2016年7月10日
このツイート、実はリリのことを言っていました。陰でずっと見ていたんだということ(←この言い方ストーカーみたいだなw)、終演後挨拶のときに伝えようかと思ったけど、何となく「いや、今ではないな」と思ってやめました。いつか線が交わったときに、お会いしましょう。
今年2016年はLILI LIMITや彼らの盟友・雨のパレードなど、自分たちの信じたやり方で以って既存の「ロックバンド」の型を大胆に飛び越えていく人たちがメジャーデビューを果たしている*1。そういう意味で重要な1年だと思っている。メジャーにフィールドを移すことによって、バンドとしてできることの幅が広がることが期待できると思うので、今後の活動、とても楽しみにしております。
▼LILI LIMIT「Living Room」
*1:この2組の共演を2014年の時点で観ていることは密かな自慢だし、ブッキングした友人はすごいなと思っている。mol-74も含めたスリーマンでした