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蜂須賀ちなみの日記帳

BIGMAMAと亡霊と存在証明書と

日付はとっくに変わった。

 

今日の夜、BIGMAMAを観るため、そしてその様子をライヴレポートに書くため、日本武道館へ行く。原稿完成させて、もはや朝じゃん、と布団を敷きながら、「17時半開演で、武道館の関係者受付は大抵混むから30分前には到着しておきたくて、それならこのぐらいの時間に電車に乗らないといけなくて……」と考えていたら、瞳がじわっと滲んだ。それで今、慌ててパソコンをもう一度開いたところ。憧れていたあのバンドの記事を書くことになった時も、こんな感じにはならなかったのに。

 

 

 

いや、きっと欠伸したせいだ、と一瞬思ったけど、そういう無駄なものを全部吹っ飛ばして、何でだろう、って考えてみる。

 

一つは単純に、BIGMAMAをついに武道館で観られる!という事実がめちゃくちゃ嬉しいからだ。

 

BIGMAMAをちゃんと聴き始めたのは、高校3年生の頃。受験勉強真っ只中&塾行かず外に出ずでラジオがお友達だったその時から、バンドものをよく聴くようになり、先に[Alexandros]*1の方にハマって、そこからBIGMAMAを知った。それから今日に至るまで、リリースはリアルタイムで追っていたし、予定が合えばライヴにも行っていたわけだけど、そうこうしているうちに、[Alexandros]は武道館ワンマンを2回終え、また、ここ数年のシーンの温度感も相まって、若い世代のバンドがブレイクの勢いに乗っかって、バンバン武道館ワンマンを打つようになった。でもなかなか、その時は来ない。もうここまで来たら焦ることなく、然るべきタイミングで堂々とあの舞台に立ってほしいと思ってはいたけど、正直いろいろなバンドの「武道館ワンマン決定!」というニュースを見るタイミングで私の脳内ではBIGMAMAの名前がよぎっていて。それでやっぱり、ああ、やっとだ!という気持ちが出てきちゃうんです、どうしても。

 

 

 

そして二つ目の理由は、ちょっとややこしい。以前、UNISON SQUARE GARDENについてのブログでこんなことを書いたんだけど――

 

一体感が生み出す素晴らしさだって知っているつもりだけど、そもそもiPodにイヤホンを挿し込んで音楽を聴くときは大抵1人なのに、なぜライヴになった途端、〈常に〉〈みんなで〉楽しまなきゃいけないのか。自分の性格が決してオープンではないということもあって、フロアに充満したどこか体育会系なノリに居心地が悪くなっていた。もしかしたら私はここに居てはいけない人間なのかもしれない、とすら感じることもあった。それでも〈ライヴレポートを書く〉という仕事があればここに居ていいという理由になる。関係者用のパスは、私にとって存在証明書だった。

 

これは何か一つ大きなキッカケがあって生まれた感情ではなく、大学生になってライヴに行けるようになり、いくつかのバンドを観ているうちに積もっていったもので。誤解を恐れずに言ってしまうと、その〈いくつかのバンド〉の中にBIGMAMAも入っていた。モッシュクラウドサーフ、肩車(?)、シンガロングなどの現象やそれを行っている人を否定したいわけでもないし、「居てはいけない」なんて誰にも言われてないから完全にこっちが自意識過剰なだけである。教室の隅っこで生きてきた人間からしたらその光景が眩しすぎたという、本当にそれだけの話だった。

 

念のため書いておくと、BIGMAMAのライヴやオーディエンスが嫌いだったということではないです、断じて。好きだからこそ、「ここに居ていいんだよ」って誰かに言ってほしかった、という方が正しい*2。それで何というか、BIGMAMAはもう、自分の中のコンプレックスの象徴的な存在になっていってしまった。〈書く理由を作ってくれたバンドの一つ〉という、特別な存在になっていってしまった。

 

だから、この1年間、もがきながら書いていた。

 

昨年12月のクリスマスライヴ

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「THE BEGINNING 2007.02.10」。

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ツアー初日の母の日公演。

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毎年恒例のUKFC。

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そして、今日の武道館。

 

立て続けに「ライヴレポートを書いてほしい」と声を掛けてもらえたこ*3、そうして「あ、私の居場所があるんだ」と実感できたことは、心の底から嬉しい。しかし書けば書くほど、若い時に抱いたあの感情はもう一生拭えないんだなという自覚に苛まれる。でも、ごちゃ混ぜになったこの感情があるからこそ、筆は進む。クリスマスライヴの日とツアー初日は、会場に早めに到着して、複数人で楽しげに話しているファンの子たちのことを数十分間眺めたりもした。もうとことん堕ちた方が、良い文章が書けると思ったから。

 

何も分からず霧の中を歩いていると不安でいっぱいになるけど、その正体を分かったうえで、地獄に飛び込んでいく方がよっぽど怖いです。でも、それをやらないと、私がライターやる意味なんてない。もうどうしようもないんだっていうことを、この1年、顎痺れるほど噛み締めた。 結局、「武道館で序章が終わる」と言うあのバンドの未来を一緒に見届けたいから、書いて書いて書いて、亡霊を迎えに行くしかないわけです。懲りることなく。自分のことを一つ救う度に「救われない仕事だなあ」と思いながら、どうにかこうにか生きてます。

 

 

 

*1:当時は[Champagne]

*2:深く考えずにやっていたけど、今まで取材で行ったライヴのパスやセトリを全てファイリングして保存しているのも、きっとそういうことなんだろうな

*3:これだけ継続的にお仕事をいただけることはもう、この上なくありがたいことです。感謝しかない