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蜂須賀ちなみの日記帳

WEAVER『Night Rainbow』|変化と不変が手を取り合う現在地

リリースから1ヶ月ちかく経ってしまったけど、書き残しておきたいからやっぱり書いておきます。

 

ということで、2/10に発売した、WEAVERにとって約3年ぶりのフルアルバム『Night Rainbow』について。

変化作だ変化作だー!って言われているしその通りなんだけど、だからこそ〈変われない〉部分が浮き彫りになっていて、どうしたってそこが愛らしいんだよなあ、という話を。

 

 

Night Rainbow 初回盤

Night Rainbow 初回盤

 

 

 

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3年ぶりのフルアルバム『Night Rainbow』を聴いて、何だか本当の意味でWEAVERに出会うことができたような気がした。それはこの作品が、これまでで最も人間味のあるアルバムだからだろう。全12曲に表れているのは、「ここから次のステップへ向かうんだ」というミュージシャンとしての成長を求める強い意志と、そんな変化の最中でもどうしても変わることのできなかったこのバンドの性格である。

 

このバンドは長いこと悩んできた。WEAVERらしさとは何だろう? そのために自分たちができること、やるべきことは何だろう?――そんな問いのなかでもがきながら、時には無理に尖ってみたり、かと思えばテクニカルな一面を覗かせてみたり、〈バンドがどう見られるか〉を気にしすぎて焦点が定まっていない印象があった。そうして活動を続けていくうちにいつの間にか息が詰まっていたし、本人たちもそれに気づいていたのだろう。2013年以降は、セルフプロデュースでアルバム『Handmade』を制作する、半年間ロンドンに留学して異国の空気を吸い込む、ベストアルバム『ID』をリリースしてそれまでの歩みを総括するなど、バンドはこの現状を打開するために動き始めることとなる。それらの行動自体が「ここから変わるんだ」という宣言であり、つまり、彼らはそうして自ら退路を絶ったのだった。

 

そんな過程を経てリリースされた本作『Night Rainbow』。EDMやAORを取り入れたサウンドを聴けば一発で分かるが、宣言通りWEAVERは変わってみせたのだ。サウンド面での変化には、バンドを突き動かす動機が〈できる/やるべき〉ではなく〈やりたい〉に変わったことが大きく関係している。「KOKO」「さよならと言わないで」のエレクトロサウンドは、EDM特有の多幸感に対する憧れ、もっと言うと、「音楽の楽しみ方はもっと自由でいいんじゃないか」という聴き手(+自分自身)への問いかけを孕んでいる。また、ここ最近のライヴで見せる各々の担当楽器に縛られない自由なステージングもその曲を十分に表現するために〈やりたい〉ことを突き詰めていった結果であろう。デビュー7年目の作品にして開放的でみずみずしい音が鳴っているのは、3年かけてバンドをリセットさせることができたからこそ、変化に臆することなく行動に移すことができたからこそ、である。

 

勇気ある決断はバンドに変化をもたらしたし、本作がWEAVERにとってのターニングポイントとなったことは間違いない。しかし同時に、彼らにはどうしても変われなかった部分がある。それを一言で表すならば、真面目さ、という言葉が一番しっくりくる。二度目になるが、このバンドは長いこと悩んできた。しかしデビュー当初からタイアップに恵まれ、ライヴの動員を着々と増やし……と端から見たらその道のりは順風満帆で、だからこそ夢や希望を衒いなく唄う彼らの曲は〈優等生〉という捉え方をされることもしばしばあった。それこそ3人とも根が真面目だから余計にだと思うが、そういう世間からのイメージに対して彼ら自身コンプレックスを感じていた。ということを踏まえて、本作を聴いて思ったのは、結局そのコンプレックスを変えることはできなかったんじゃないか、ということ。しかし、そんな性格だってWEAVERの一部なんだと彼らは受け入れ始めたのではないか、ということ。ここが今までと大きく異なる部分だ。バンドの挑戦心が表れた様々なタイプの曲が続くなか、後半に配置された「Welcome!」は(これまでの)WEAVERの超王道と言うべき曲だ。キラキラと光るピアノの音色。爽やかな杉本の歌声。弾むようなリズムライン。ポップに花咲くサウンドのなかで彼らはこう唄う。

 

綺麗事の雨の中を

傘もささず歩いていこう

「奇跡はおこる」「夢は叶う」

そんな言葉じゃ風邪もひかないさ

(「Welcome!」より引用)

 

綺麗事だろう何だろうと、それはもう一生懸命飾り立てた言葉などではなく、葛藤の海を越えた先で見出したひとつの答えだ。楽しいときは目一杯笑えばいいし、希望も夢も眩いばかりに輝かせればいい。そうやって幸福を紡ぐ彼らの音楽は、どうしたって相手ありきのものなのだ。

 

音楽そのものや、その先に待つ聴き手とまっすぐ向き合うその真面目さは変える必要なんてない。拭えないコンプレックスが、本当の意味での〈自分たちらしさ〉として昇華し始めた今だからこそ、変化の先へ臆することなく飛び込むことができるのかもしれない。あるいは、ミュージシャンとして進化するために変わり続けることが必要だと実感したからこそ、変えられない部分は絶対に守るんだという信念が生まれたのかもしれない。 そのどちらが先にあったかは分からないが、そうやってバンド自身が飾らない姿でいてくれるから、こちらのことも受け入れてくれるんじゃないかなと安心してその身を委ねられる。だから、初めて、本当の意味でWEAVERに出会えた気がした。素に近い温度感で、ようやく手を取り合えたような気がしたんだ。

 

変わり続けるための意志も、変えられない性格も抱きしめて。代用品のない幸福をあなたとともに紡ぐため、WEAVERは新たな一歩を踏み出した。もしかしたらこれから先だって悩みや苦しみにぶつかるかもしれない。それでもきっと、夜空に架けたこの虹が彼ら3人の、それからWEAVERの音楽を慕う私たちの、道標で在り続けてくれるんじゃないかな。

 

 

# favorite track

6曲目「KOKO」、9曲目「Welcome!」

 

 

★3曲目「くちづけDiamond」


WEAVER "くちづけDiamond" Music Video | #やまじょ #WEAVER @WEAVER_STAFF

 

★4曲目「さよならと言わないで」(ライヴ映像)


WEAVER 「さよならと言わないで」 HALLTOUR 2015 @NHK Hall

 

★6曲目「KOKO」


WEAVER 「KOKO」Music Video

 

★8曲目「Beloved」


WEAVER「Beloved」MusicVideo

 

★10曲目「Boys & Girls」


WEAVER「Boys & Girls」MusicVideo

 

MVある曲多いな……!!