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蜂須賀ちなみの日記帳

今期はこのドラマ観てます|2021年冬

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(以下、敬称略で統一します)

 

年始にやっていた逃げるは恥だが役に立つ、通称「逃げ恥」の新春スペシャル、観ましたか?

www.tbs.co.jp

 

私は「スペシャル放送するよ」というニュースを見たその日からずっと楽しみにしていたので、もちろん観ました。が、個人的には「うーん……」と思ってしまいました。

 

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これがメインビジュアルなのですが、背景にずらーっと並んでいる項目を2時間25分で全部拾っていくのはさすがですよね。だけど、拾うことが一番大事にされている印象を受けてしまったというか。曲を作るときに歌詞から書くのを「詞先」、メロディから書くのを「曲先」と言うのですが、それになぞらえると「イシュー先」に感じて、キャラクターが自分の意思で動いているようにも、俳優が演技をしているようにも、感じられない。「脚本」があたかもこの世界を司る神であるかのように、前面に出過ぎているように感じてしまったんですよね。だからシンプルに、観ていても楽しくなかった。原作にないコロナ禍を描いた後半パートは特に……。

 

「逃げ恥」、そして「アンナチュラル」「MIU404」。野木亜紀子という脚本家は今や人気ドラマ脚本家の一人かと思います。彼女が脚本を手掛けているドラマを観ている限りだと、本人に「これを伝えたい」という明確な意思があり、使命感がある。また、今はそれを支持しているファンが一定数いて、「使命感を果たすこと≒ファンの期待に応えること」という状況になりつつある。その状況が「逃げ恥」をこうさせたのかな、と個人的には感じています。

 

まあ、これだけやっても伝わらない層もいるから、こういうドラマを作る意義も理解できる。私は実家で観ていたのですが、家事・育児を「手伝う」というスタンスを問うシーンや大黒柱の話題が出たシーンで、うちの親は「めんどくさっ」と言っていたし、みくり(新垣結衣)と平匡(星野源)が自分たちの子どもの名前を考えるシーンで「生きているなかで性別が変わることがある」という台詞が出てきたときには「え、そんなことってある?笑」という空気になった。そういう反応を目の当たりにすると、一度根付いたものを覆るのは難しいなあという実感と、「は? あなたは今まで『逃げ恥』の何を観てきたの?」という憤りがふつふつと湧いてくるわけですが……。

 

「逃げ恥」にはノレなかった一方、岸辺露伴は動かないを楽しく観たり、この夏ハマったタイのドラマ「2gether」とその続編「Still 2gether」WOWOWにもやってきたので録画しておいたそれをチビチビ観ながら癒されたり……というのが私の2021年年始でした。

 

という前段を終えて、 ここからが本題。今期観ている連ドラを曜日順で紹介していきます。

 

 

  

「にじいろカルテ」

テレビ朝日/木曜21時)

www.tv-asahi.co.jp

Dr.コトー診療所を彷彿とさせるような、医療・ヒューマンドラマ。主要登場人物は、内科医の紅野真空(高畑充希)、外科医の浅黄朔(井浦新)、看護師の蒼山太陽(北村匠海)。北村匠海ほど前髪ぱっつんが似合う男性、この世にいないのでは?と思いながら毎週観ています。

 

真空は難病持ちの内科医で、最初はそれを隠した状態で村の医師募集に応募する。真空だけではなく、村の人たちも(まだ描かれていないが、おそらく一緒に働く医師・看護師も)それぞれいろいろな事情を抱えていて、だけど互いに関わり合いながら生きているよ、という話。

 

【※第5話放送後追記】ただ「しんどさお披露目選手権」みたいな感じにしたいわけではないことは、過去の出来事にまつわる朔の台詞や、太陽というキャラクターの存在から見て取れる。

 

個人の問題を詳らかにさせながらも全部まとめて温かく包んでくれるこの感じ、何だか既視感あるなあと思っていたら、前クールで大好きだったドラマ「姉ちゃんの恋人」と同じ脚本家でした。ああ、それはハマるわ、と自分でも納得。朔が真空の病気を知ったときに言った「医者で患者? 最強じゃん」という台詞の軽やかに救ってくれる感じに初回から泣いた。

 

登場人物がパーフェクトな人格とは言い難く、「ちゃんと欠けている」感じもいい。象徴的なのは「くせにポイント表」。村の診療所は住宅も兼ねていて、真空・朔・太陽の3人は一緒に暮らしている。ある日、真空が「それでも女かよ」「女のくせに」といった言葉に対する嫌悪感を示し、「そう言われたらちょっとキレちゃうかもしれないので……」と牽制したのをきっかけに「~のくせに」という発言をしたら1ポイントたまる(10ポイントたまるとペナルティが課せられる)ポイント表が導入される。

 

……というだけだったら、時代の風潮を汲めているドラマだなあで終わるんだけど、言い出しっぺの真空でさえも普通に「~のくせに」と言ってしまい、ポイントがたまっていくという。フラットであろうと思っても(自覚の有無に関わらず)完璧にフラットでいられている人なんてほとんどいない。誰もが考えたり、戸惑ったり、悩んだりしながら過ごしている。そんなところにもちゃんと目が向けられています。

  

 

「俺の家の話」

(TBS/金曜22時)

www.tbs.co.jp

面白い。めちゃくちゃ面白い。基本コメディでぶっ飛んだ展開なのに、泣ける。今期の「心の覇権」です。

 

主演:長瀬智也×脚本:宮藤官九郎というタイガー&ドラゴンと同様の座組。劇中劇(登場人物の回想シーン)を能でやっているのが斬新だなと思ったけど、そういえば「タイガー&ドラゴン」もそうだったような?(うろ覚えです)

 

私は能に詳しくないので、「出演料が低いと、シテ方(舞台の真ん中で舞う人)は出演すればするほど赤字になる」「終演時には拍手を送らず余韻に浸るのがマナー」「能もプロレスも体幹が大事」(ということは能楽師が戦ったら強いのかな?)など、へえ~ポイントが多数でした。詳しい人にとっては、劇中に登場する謡と本筋のストーリーとの関係性の考察とか、そういう楽しみ方もあるのかもしれない。

 

介護、世襲学習障害……と、扱っている題材自体は重めだけど、それこそ「イシュー先」にならず、キャラクターたちがいきいきと動いています。おそらく最後の連ドラ出演であろう長瀬智也はもちろん、その父で人間国宝という役どころの西田敏行の演技に毎話グッとくる。人間国宝である以前に人間。介護者される人である以前に父親。

 

 

「書けないッ!?~脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活~」

テレビ朝日/土曜23時半)

www.tv-asahi.co.jp

「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」然り、「ウチの娘は、彼氏が出来ない!!」然り、今期は作家・編集ものが多い印象があります。「ウチの娘は~」に関しては「川上洋平の役者姿を観る」という目的もあったため、2つとも一応第1話は観たのですが、脚本にノレず脱落……。で、作家・編集もののうち、唯一継続して観ているのが「書けないッ!?」です。毎話大笑いさせてもらっています。

 

脚本:福田靖海猿ガリレオNHK朝ドラのまんぷくの人)の手捌きが光る、テンポがよくて隙のないコメディ。生田斗真がコメディアンぶり、表情筋フル活用ぶりを存分に発揮。家庭教師役の菊池風磨は、ジャニーズ発の次世代コメディアンポジとしての可能性を感じます。好みは分かれると思うけど、かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」が好きな人ならば、きっと好きになるんじゃないかと(ドラマの話なのにアニメを例に出してすみません……)。あと、同じくテレ朝で1つ前の時間帯に放送されている「モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~」がやや重めだから、そことのバランスを鑑みてもこのくらい振り切ってくれた方がいいなあと。

 

 というか、この土曜深夜枠からテレ朝の連ドラに対する攻めの姿勢が読み取れますね。1時間で30分のドラマを2本放送、しかもどちらもオリジナル脚本という。「モコミ」の枠は「土曜ナイトドラマ」という名称で、前クールの「先生を消す方程式。」から30分に変わったのですが、なるほど、このためだったんですね、とここで伏線回収された感。

 

「書けないッ!?」に話を戻すと、私はライターなので、あるある~って感じるポイントが個人的に結構多いです。例えば、

・打ち合わせの去り際の台詞「メールしまーす」or「メールくださーい」

・追い詰められた時に見えるやたらネガティブなことばかり言ってくる幻影(ハマケンこと浜野謙太演じるスキンヘッドの男=ツルツル)

・「書きたいものを書く」と「クライアントからの要望に応える」のバランス、プライドの持ちようの話(プライドがあった方が偉いの? ないとダメなの?)

 

「書くのは脚本家だけど、人の目に曝されるのは役者だから意見する権利はあると思うよ」という台詞もまさにその通りだと思ったし、脚本家がこの台詞を書いているというのも面白い。他にも、何てことないように書かれている台詞に深く考えさせられる瞬間があります。 

  

 

「ここは今から倫理です。」

NHK総合/土曜23時半) www.nhk.jp

放送時間が「書けないッ!?」と丸被りなので、録画で観てます。実験的な作りのドラマで、今までにない学園ものだと思います。結構ヘビーな内容ですが、人におすすめしたくなる作品。

 

大前提の物語設定に焦点を当てると、学園ものは数多くあれど、倫理の先生にスポットを当てたドラマは意外となかったような……。「学園ものの盲点をつく」という巧さは、「青のSP(スクールポリス) -学校内警察・嶋田隆平-」も同様ですね(「いじめ」と呼ぶからいけないんだ、あれは犯罪だ!ってよく言うのに、その設定誰もやっていなかったなあと)。因みに「ここは今から倫理です。」は漫画、「青のSP」は小説が原作です。

 

 「ここは今から倫理です。」が提示するのは、直情的で、まっすぐにぶつかってくる熱血教師ではなく、クールで、人の芯をぐいっと見つめてくるような新しい教師像。山田裕貴は最近一捻りある役で見かける機会が多いけど、個人的には今回が一番彼に合っている気がしています。

 

 生徒役の若い俳優含め、それぞれの表情が克明に捉えられていて、そこから伝わってくる情報が多く、これこそ「演技」だよなあと。ドラマではあるものの、劇場で演劇を観ているときのような、凛とした空気が全体に流れています。……と思って調べたら、脚本家が劇団を主宰している方なんですね。プラス、きっと演出の力によるところもあるのでしょう。

  

 

そのほかには、JIN−仁−チームによる「天国と地獄 ~サイコな2人~」(TBS/日曜21時)も毎週観ています。先週(第3話)がすごい展開だったので、そこからどう転がるのかが楽しみですね。シリーズ化している「監察医 朝顔バイプレイヤーズ名脇役の森の100日間~」はやはり安定感があるなあと。「その女、ジルバ」はいい評判ばかり聞きますが、残念ながら観れていないので、別のタイミングでチェックできればと思っています。

 

【※追記】「その女、ジルバ」、期間限定で全話無料配信していたため一気観したら最高でした。こちらも今期の心の覇権。

 

www.tokai-tv.com